特別寄稿

トヨタ自動車株式会社 相談役
株式会社デンソー 取締役副会長
齋藤 明彦
昭和38年卒業(第22回)

Today for Tomorrow
―明日のために 今やるべきことをやる―

 20世紀の終盤に、世界に初めて量産ハイブリッドカー「プリウス」が登場した。 勿論、この車を世に生み出すためには、実に数多くの新技術開発が必要で あったし、そのために通常の商品とは一線を画す相当量の投資が行われた。

 しかし、今振り返ってみると何よりもまず、この車を発売しようという『決意』が必要だったのではないだろうか。そして、その決断は、その後に続く時代における自動車産業の使命と責務を大きく転換していく、その第一歩となる特別な意味を持っていたように思う。

 すなわち、少しでも先の未来のあるべき姿を描き、そこにできる限り早く到達したいとの願いのもと、今やるべきことをすぐにやろうという新しい時代の 信念だったのではないだろうか。

 そして今日の自動車産業を取り巻く世界を鑑みれば、「環境」、「安全」、「健康」など企業が背負う使命と責務、そして「感動」、「快適」、「自由」など人々が 欲してやまない要求を少しでも高く、かつ、早く両立・実現させるための、 いわば知力と行動力が問われている。

 このような時代には、過去の連続としての今日に甘んじていては、一瞬にして淘汰されてしまう可能性を否定できない。これからの時代に求められるのは、少しでも先の未来を読み、その原因としての今日の判断と行動、そして、それを可能とする発想とアイデアではないのか。

 これは、決して企業だけに求められることではない。日本の産業全体に、そして最高教育の場としての大学のあり方にも大きく影響するのではないだろうか。

 「明日のために今やるべきことをやる」−Today for Tomorrow−
この思いを少しでも多くの皆様と共有できればと願う。

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