副会長挨拶

東山会副会長
石田 幸男
昭和 45 年卒業(第 29 回)

転機にある同窓会活動

 例年,東山会会報には会長挨拶が最初のページの記載されておりますが,水野会長から副会長も記事を書く機会がある方が良いのではないかとのお勧めがあり,僭越ではありますがご挨拶させていただきます.

 まず,現状報告といたしましては,東山会の懸案でありました財政問題も,昨年度までの理事会で検討してきました構造改革によって,年会費制度へ変えることなく,乗り切ることができる見通しになりました.名簿発行形式の変更,会報の電子化など時代の流れに沿った変更も会員の皆様に受け入れていただいたようです.支部活動につきましては,東山会関西支部が活発な活動を続けておりますが,これまで休止状態にありました東山会関東支部も,関東地区の方々のご努力により再出発しようとしております.まもなく,その具体的な姿を皆様にお伝えできると思われます.また,名古屋大学の全学同窓会は,法人化された名古屋大学を支える組織として,様々な活動が始まりました.

 このように表向きには同窓会活動は活発に行っておりますが,名古屋大学という現場におりますと,実は同窓会活動の基盤を弱めるいろいろな変化が起きているような気がします.その第一は,情報公開に対する社会の厳しい変化です.これまでのような形態の会員名簿の発行が難しくなりました.しかし,世界中で活躍している同窓生を結ぶ情報ネットワークが構築できないようでしたら,同窓会活動がきわめて困難となります.第二は,若い人たちの人間関係の希薄化です.先日,ある学生に同級生へのことづけを頼みましたら,そのような学生を知らないという答えが返ってきました.いろいろと話してみますと,同じクラスのほんの一握りの学生の名前しか知りません.卒業後,30年以上たっても同じクラスの100名の仲間の顔と名前が結びつく私にとって,これは驚きでした.しかし,小学生が戸外で遊ぶと危険と言われ,放課後は塾だけに出かける社会で育つ現状では,広い人間関係を作る訓練ができないのでしょう.卒業時に東山会に入会を勧めると,同窓会に入る必要性を感じないという答えが返ってきます.たぶん,会社でも新製品開発のため激論を交わす場面は減り,それぞれパソコンの画面に見入っている沈黙の職場が増えているのではないでしょうか.

 同窓会活動の基本は,人間関係を大切にし,自分のまわりにあるすばらしい人的ネットワークから先輩の活躍を知るとともに,その仕事の知恵を借り,さらには人生の生き方を学びたいという気持ちであります.このような心の結びつきを育てる意味で,東山会では今年から「イブニングサロン」を始めました.ワインを飲み,軽食を食べながら先輩の仕事上の経験,製品開発秘話などの話を聞く楽しい催しです.将来の東山会会員を育てるため,卒業生だけでなく,在学生にも講義中に案内をしております.その第一回はトヨタ車体鰍フ沼田氏に「社員ナビゲーターのパリダカ参戦記」の話をしていただきました.参加した学生からは,非常に面白かったと好評でした.第二回はこの会報が出るころ,潟fンソーの西島氏に「クリーンディーゼルを支える高圧燃料噴射」の話をしていただく予定です.現在,満員御礼で断らなければならないのではないかと心配するほど多くの申し込みがきております.このような草の根的な活動が役にたち,本当の意味で同窓会が育ち,発展していくことを願っています.

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