会員からの便り

三重大学
特命学長補佐 大学院特任教授

加 藤 征 三

昭和 42 年卒業(第 26 回)

「名古屋は元気!」の一考察

 「名古屋は元気ですね」のフレーズは出張先で交わす挨拶の定番のようで、当事者でない我が身には面映ゆい。この元気の源は東海地域産業の卓越した「エコものづくり」パワーに他ならない、と言えるのではないだろうか。

 このことはエネルギーと経済の統計量を調べるとすぐに納得がいく。EDMC07版から我が国の「エコものづくり能力」を先進国のアメリカ(USA)と欧州(EU)、発展著しい中国(CHN)と比べてみると、例えば、1兆$の生産高(GDP)を得るのに要したエネルギー消費量(石油換算値:2004)を求めると日本が1千dに対しUSA:2億d強、EU:2億d弱、CHN:8億dとなり、同じく単位GDPに対するCO2排出量の比は日本を1とするとUSA:2倍強、EU:2倍弱、CHN:10倍強となる。この数値から日本の"ものづくり"技術力は超省エネでダントツ世界一の環境にやさしい生産能力を有していることがわかる。

 この世界一のエコものづくり技術は、欧米が導入するだけで世界のCO2排出量は1990年並み、つまり京都議定書の基準排出量に近い値にまで削減でき、さらに中国が40%程度導入(これでも中国のCO2/GDP比は日本の6.5倍)すれば世界のCO2排出量は京都議定書の約束削減量を達成できる、という俄には信じがたい素晴らしさである。東海地域の産業がリードする"エコものづくり"技術によって地球温暖化防止にも多大の国際貢献ができるだけでなく、こうして生まれたエコ・プロダクツは世界市場を制覇できる期待がある。

 最近のEUは環境保護を名目に次々と輸入品に対する環境指令を乱発し、それらの国際基準化を意図している。その戦略は当該輸入製品が指令基準条件をクリアしているエビデンスに裏付けられ、クレームがあれば10日以内に公開する義務を課し、その審査をEU委員会が行うことにあり、その実体は貿易障壁に他ならない。これに打勝つにはEUに有無を言わせないダントツのトップランナー品質製品を創り出す以外にない。我が国のエコものづくり技術こそ、これを実現できる最有力候補である。

 私、本年3月末で定年となりましたが、定年後の一つのチャレンジは大学での教育・研究を実践的活動(大学で抱いていた夢の実現化活動?)へ移行することです。中小・中堅企業へのエコものづくり支援「エコ・プロ・ネット;環境付加価値を創造する製品開発支援ネットワーク(経産省中部経済産業局監修、代表:私、http://www.ecopronet.jp/)」とこの海外展開への実践。ものづくりのメッカである東海の地であればこそ実現できそうな気がします。同窓生の皆様のご支援をお願いするばかりです。

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