特別寄稿

機械理工学専攻
機械科学分野
環境・エネルギー工学講座
伝熱・燃焼工学研究グループ
博士課程前期課程2年
大堀 晋也

学生フォーミュラについて

 私たち名古屋大学フォーミュラチームFEM は2006年9月に開催された第4回全日本学生フォーミュラ大会に参戦し、50チーム中準優勝というタイトルを獲得しました。さらに、本大会では世界各国の自動車技術会が加盟するFISITA主催の2006 FISITA Formula SAE World Cupも同時併催され、世界第2位という栄えある成績を収めることができました。私たちの活動をこの場を借りて紹介させていただきます。

【全日本学生フォーミュラ大会】

 全日本学生フォーミュラ大会では、学生たちが企画・設計・製作したフォーミュラスタイルの小型レーシングカーで競技が行われます。この大会は、米国で1981年から毎年開催されているFormula SAE(SAE International主催)のルールに準拠して開催されます。本大会の趣旨は、ルールに適合した車づくりを通じて、実践的な問題解決力や応用力、行動力やマネジメント能力などを高める一つの機会を学生に提供することです。

 学生は、アマチュア週末レーサーに販売することを仮定して車両を製作します。したがって、加速性能、ブレーキ性能、操作性能、耐久性能が優れているだけでなく、美しさ、快適さ、低コスト、メンテナンス性を高めることも要求されます。

 上記の車を評価するために、競技には静的イベントと動的イベントがあり、ものづくりの総合力が問われます。具体的には静的イベントでは、設計の妥当性を競う審査や、車両の生産コストの安さを競う審査、プレゼンテーション能力を競う審査があります。動的イベントでは、車検通過後に実走で加速性能、旋回性能、耐久性能や燃費などを競うものがあります。これらの静的イベントと動的イベントの評価が点数化され、総合的に評価されます。

【名古屋大学フォーミュラチームFEMの活動】

 私たちは2003年11月に活動を開始し、毎年9月に開催される本大会へ参戦するべく、競技用のフォーミュラカーをゼロから開発しています。3年前の第2回全日本学生フォーミュラ大会に初参戦して総合12位とルーキー賞1位を頂き、2年前の第3回大会は総合9位でした。2007年度現在活動中のメンバー構成は、学部1年生から修士2年生まで約30名となっています。

 車づくりではコンセプト立案に始まり、定められたルールの中で車両を開発しています。具体的には、車両コンセプトに沿った開発目標を立て、必要な知識を学んで車を設計し、工作機械や溶接機を使用して自分たちの手で造り上げています。さらに、製作した車両の試験走行を行うなどして理論と実用を検証し、ここで得た知見を開発にフィードバックすることで開発目標を達成し、車両コンセプトの実現を目指しています。

【学んだこと】

 本活動の意義は上記の通り、実践的な問題解決力や応用力、行動力やマネジメント能力などを高めることにあります。また、物を作ったり、見たり、考えたりする楽しみを直に感じられる点にもあります。最後に私が本活動で学んだことの一つを述べさせていただきます。

 私は本活動で、工学を通じて人の役に立つことへの充実感を学びました。第4回大会ではエンジン部門長を務め、開発目標として「低中速トルクの向上」を掲げました。これを実現する手法を調べたところ、エンジンの動弁系・吸排気系・燃料系の3つの系統を改良することが有用であると判断しました。特に動弁系では、カムシャフトの輪郭を設計してバルブタイミングを変更することで、低速での吸気効率の大幅な向上が期待できると考えました。そこで、大学の講義で学んだ力学や機構学、材料力学などを勉強し直し、新たなカムシャフトを設計・製作しました。その結果、低中速トルクを従来の1.2倍に向上させることができました。このとき、その車両を運転したドライバーの高評価が得られ、私は大変充実感や達成感を覚えました。こうした経験から現在、ものづくりを通じて人の役に立てるエンジニアという職種は素晴らしいものだと感じています。そして、自動車エンジニアになると決意するだけの貴重な機会となりえた点で、非常に意義のある活動だったと思っています。

全日本学生フォーミュラ大会:http://www.jsae.or.jp/formula/jp/
名古屋大学フォーミュラチームFEM:http://nagoya.fem.jp/index.html

FEM03外観

耐久走行競技

大会終了後記念撮影



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