平成20年度 東山会会報 学内近況

グローバルCOE
「マイクロ・ナノメカトロニクス研究教育拠点」




名古屋大学マイクロ・ナノGCOE

拠点リーダー 福田敏男

 1.はじめに
 本拠点は,21世紀COEプロジェクト(2003-2008)の後を受け,本年度に文部科学省に採択された5年間の教育・研究プロジェクト(2008-2013)で,マイクロ・ナノメカトロニクスを基盤とする新しい学際的な研究分野の構築を通して新分野に果敢に挑戦する若手人材・リーダーを育成することを目的としています.このため専門領域の課題だけでなく社会的課題も見つめる広い視野に立った「独創性に溢れる世界最高水準のマイクロ・ナノメカトロニクス研究」を推進します.本プログラムでは,名古屋大学の特長あるマイクロ・ナノシステム工学専攻を軸として材料科学,機械科学,計測・システム工学の研究者を結集し,重要な応用分野であるバイオ・先端医療技術の専門家を加えた研究体制によって,新しい機能を有する材料,機械さらには新しい医療を支えるさまざまな機械技術の創出をめざす総合的な研究を行うと同時に,国際的な教育研究環境を構築し,マイクロ・ナノメカトロニクスおよびその先端医療分野への応用を推進する実践的若手研究リーダーを育成します.

2.研究分野
 本拠点では,機械科学、材料科学に基礎を置くマイクロ・ナノメカトロニクスとそのシステム化技術を体系化・総合化し,重要な応用分野である先端医療分野のニーズに対応できる科学技術を確立することを狙いとしています.基盤分野として@原子・分子・細胞・組織などの微細操作や機能発現操作,マイクロ・ナノシステムの設計をめざすナノ制御学,A分子・たんぱく質・細胞の機械物性や流動の計測,生体機能の計測評価をめざすナノ計測学,Bマイクロ・ナノ加工,超精密位置決め機構などを発展させた超精密・微細加工技術をめざすナノ設計・製造学,CMEMSや集積回路における材料評価や新しい機能性表面,機能性材料の開発をめざすナノ材料学の研究を進め、研究チーム間の共同研究や国際連携によって,総合的なマイクロ・ナノメカトロニクスを確立します.また産業界や社会的な課題をオープンクラスター制度によって捉え,その課題解決のためのプロジェクトを4つの基盤分野を横断する形で進めています.特に多くの未踏分野を抱えかつ緊急性のあるバイオや医療技術の課題を取り上げて,その解決のための研究を実施し,システムインテグレーション技術により統合化をはかり実用化を進めています.


3.人材の育成と教育プログラム
 世界のマイクロ・ナノテクノロジーをリードする人材の育成には,基礎となるナノ制御学,ナノ計測学,ナノ設計・製造学などの機械科学の修得に加えて,これらの学際領域,未踏領域において専門知識を活用する能力,さらに社会における工学倫理やニーズを理解し,その問題解決を図ろうとする意欲などが求められます.そのため,基礎となる科学・工学の正確な修得,社会のニーズを把握する視点の獲得,世界的な視野からの研究テーマの提案力,さまざまな要素技術のシステムインテグレーションに基づく課題解決力の養成に重点をおいた教育研究によって,次世代のマイクロ・ナノメカトロニクスとその応用としての先端医療分野における国際的なリーダーを養成します.
 マイクロ・ナノ分野の高い専門性とバイオ・医療分野を中心とした応用分野を幅広く把握する視野を得るために工学研究科の複数の専攻を横断する教育プログラムに医学系研究科における関連科目を融合した特長ある大学院教育プログラムを採用しています(インターディシプリナリ・スタディ).また、講義プログラムと並行して,海外の連携大学(UCLA),協定大学や産業界と共同で企画する各種のセミナーやワークショップを実施し,社会のニーズを把握する力や世界的な視点からの研究課題の提案力などを養成します(プロジェクトベース・ラーニング).博士後期課程の院生(RA)やポスドクに対し,拠点内でのポストや研究資金の公募を実施して,独創的研究へのインセンティブを高めます.また,研究費の配分を伴う競争的な研究環境によって,若手教員,ポスドク,博士課程学生に課題解決型のプロジェクト研究を促します.これらの教育研究システムによって,独創性を有し企画提案力のある若手研究リーダーの育成をめざしています.


4.世界をリードする研究センターの設置
 世界に通用するリーダー養成のため,国際的に活躍しているトップ研究者を招聘(短期)すると同時に,若手研究者と大学院生を海外に派遣し世界レベルを把握させ,また国際性を涵養します(総合力・国際力教育).連携大学のUCLAなど現在までに交流実績のある大学や研究機関との研究,教育上の交流を促進し,世界に開かれた教育研究環境を実現します.このため,マイクロ・ナノメカトロニクス研究センターの設置も計画されています.

5.その他
 ホームページ以外,マイクロ・ナノメカトロニクスのシンポジウム,セミナーや国際会議International Symposium on Micro-Nano Mechatronics and Human Science (MHS),UCLAとのワークショップ等を通じて,大学院生の教育と研究の成果を内外に公表する予定であります.
まだ始まったばかりであり,諸先輩のご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします.

メンバー
福田敏男(拠点リーダー)、大日方五郎、高井治、生田幸士、社本英二、
梅原徳次、福澤健二、佐藤一雄、新美智秀、上田実(医学系研究科)、
磯部健一(医学系研究科)、巨陽、成瀬一郎、大野信忠、佐宗章弘、
興戸正純、臼倉治郎、Chih-Ming Ho(UCLA)

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