平成21年度 東山会会報

会員からの便り

トヨタ自動車株式会社
生技開発部

片桐 秀典

昭和54年卒業(第38回)

打倒“100年に一度の不況”

 2008年は工業界にとって、激震の始まりの年でした。
私共トヨタ自動車も、秋以降の金融危機に端を発した雪崩を打ったように激しく、かつ驚異的速度の景気悪化に飲み込まれ、一気に赤字に転落。今、まさに生き残りをかけ、会社基盤再生の取組みを全社およびグループを挙げて推進しています。

 振り返ってみますと、2007年までは世界総市場が順調に伸びるなか、自動車産業の裾野の広さと、ここ東海地域のもの造りに根ざした産業基盤の強さと相まって、“元気な名古屋”に多くの人材が集まり、特に直近の10年間、量的規模は急拡大しました。 業務の効率化や標準化に加え、人員、設備増強やアウトソーシング化等を進め、何とか乗り切れるかと思った矢先の市場の急落。祭りの後には多くの課題が残りました。

 そのひとつに、もの造り力の低下が挙げられると思います。ここ10年間は、量拡大への 対応あるいは IT 活用したスピードアップ技術は確実に進化しましたが、ともすると、地に足のついた、ベーシックなもの造り技術の深化、伝承が疎かになりがちな時代であったように思います。まだ、過去に培ってきた財産(知見、人材)で対応できていますが、次を引継ぐ世代が心配です。自ら手を汚して現地現物で解析し、者ではなく物に教わり、知恵と工夫を凝らして課題を克服しながら、もの造りを推進できる人材育成への建て直しが急務だと考えています。

 私が担当しています生技開発部は、正に自ら手を汚して、もの造り技術開発を推進する 部署でして、その責任の一端を担うべく、厳しい時代だからこそ、楽しく元気よく、スピード感をもって開発に取り組み、これからの10年を支えるもの造り力の基盤強化と人材造りを推進しております。東山会会員はじめ多くの若手技術者は、機会を与えれば吸収力は高く、その期待に十分応えてくれるものと確信しております。

 多くの東山会会員の皆様におかれましても、各方面でこの100年に一度と言われる不況と闘っていることと思います。ご健勝とご健闘を祈念申し上げます。

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