この度東山会副会長を仰せつかりました名古屋大学の田中英一でございます.就任に際しまして,母校教員の視点から,一言述べさせていただきます.
皆様もご承知のとおり,国立大学を取り巻く状況はきわめて厳しいものがあります.大学の基盤的経費である運営費交付金や,新しい教育と研究を実践していくのに不可欠な競争的資金が軒並み削減されています.しかも,支援職員の削減も着々と進められ,それに反して日常的事務業務や競争的資金への応募調書・報告書作成,認証評価,法人評価等への対応業務等は飛躍的に増えており,教育と研究に割く時間が著しく減少しています.例えば名古屋大学では平成23年度の運営費交付金は5%程度削減されると推定しておりますが,この額は研究室に配分される研究費に換算すると約30%の削減に相当します.国はこれを3年間続けるといっており,その場合には大学財政は破綻すると大学本部は強く危惧しております.また,グローバルCOEプログラム(国際的に卓越した教育研究拠点形成のための重点的支援)やグローバル30(国際化拠点整備事業),リーディング大学院構想等,世界の中で我が国の大学が生き残っていくために不可欠なプログラムに対する財政支援が民主党の仕分けにかかり,見直し,削減等,次々と厳しい判定にさらされております.
そうした厳しい状況下でも,名古屋大学は教育と研究,社会貢献の面で従来以上に大きな役割を果たそうと強い決意で臨んでいます.その現れの一つとして,名古屋大学は同窓会との連携を強く望んでおります.名古屋大学の第2期中期目標・中期計画(平成22年4月から6年間)では,「社会・産業界・行政・他大学等との連携を通じて,社会に貢献する」という目標を掲げ,それを達成するための計画の一つとして,「卒業生・修了生のコミュニティを通じ,社会との連携を深める」としております.すなわち,同窓会を大学のパートナーとして位置づけ,大学の教育と研究,社会貢献に積極的に協力して欲しいということです.
東山会におきましても,すでに上述のことを先取りする形で規則整備を行っております.
2004年の東山会規則改定で,会の目的を「会員の親和をはかり,文化の進歩発展に資することを目的とする」から,「会員の親和をはかり,また名古屋大学における本会の母体となる学科・専攻の学術研究・教育への協力を通じて人材の育成に寄与し,以て人類の福祉と文化の発展,並びに産業の振興に貢献することを目的とする」に改正しております.そしてこのような改正の趣旨に沿って,名古屋大学出身者だけで運営する仕組みを,同窓会会員と他大学出身者を含む大学教員とが協力して会を運営する仕組みに変更しております.今般機械系教室の梅原徳次教授には,その趣旨をご理解いただき,他大学出身者として初めて理事,しかも事務局を切り盛りする庶務理事をお引き受けいただきました.感謝申し上げたいと思います.
以上のように,東山会でも改革が進められておりますが,まだ多くの重要な課題があるように思います.私が気にかかっている点は,活動がもう一つ活発でなく,会員の中での存在感がほとんどないのではないかという点,名古屋大学出身の学内教員が少なくなり,会を積極的に支える人材が不足してきている点,さらに最近教員が非常に忙しくなり,また業績の個人評価も厳しく行われるようになって,東山会活動を行う余裕をなくしている点,等多々あります.このような課題を解決するには,執行部体制の見直し等を含めた抜本的改革を考えていく必要があるように思います.私の任期もあと1年あまりで時間的余裕がありませんが,その検討のとっかかりでもできればと考えています.皆様方のご支援とご協力をお願いいたします. |