平成24年度 東山会会報

会員からの便り


三菱重工業(株) 航空宇宙事業本部
民間機技術部
(現在:三菱航空機(株) 構造設計部)

田中 秀明

昭和 57 年卒業(第41回)

材料力学の教科書

 大学で機械工学を勉強している娘が材料力学の本を持ってきた。清家政一郎先生の「材料力学」である。我々第41回生が使用していたのと同じ教科書である。我々の教科書は初版2刷、娘のは新訂版23刷であるが、ほとんど変わっていない。入社以降常に手元にあり、ぼろぼろになってしまった教科書である。(下記写真:左は私の、右は娘の)清家先生は講義で「この教科書は会社に入ってもずっと使い続けるものです」と言われていたが正にその通りとなった。もう、30年近く前のこととなってしまったが、入社時の書類に「不得意教科記入欄」があり、「英語、材料力学」と記入した。採用担当者は何を見間違えたのか私を「英語で材料力学」をやっている課に配属した。入社2年目の時、200トン余の圧力容器を中国に輸出するための架台の設計をまかせられて、材料力学と格闘しながら強度計算を行った。BMDを書きながら中国人エンジニアとの打ち合わせをしたり、現地調査、商談もまかせられた末に無事に工事が完了し感無量であった。この時、材料力学をどのように製品に使えば良いか、そして、これがいかに役に立つかを知った。以後、航空機の炭素繊維複合材構造の設計に携わり、戦闘機、ヘリコプタ、ビジネスジェット、旅客機などの複合材構造を開発、設計してきたが、この教科書はいつも机にあった。新入社員向けの材料力学の先生も数年やった。木の枝を片持ち梁でモデル化するなどモデル化の手法をトレーニングして「会社で使える材料力学」を教えたが、主応力やモールの応力円の説明はこの教科書に負うところ大であった。第5回東山会イブニングサロンで紹介させていただいたように、今、国産旅客機MRJの開発を行っている。複合材技術も新技術を投入しているが、この教科書は今日も現役である。


左は私の教科書(初版2刷)、右は娘の教科書(新訂版23刷)

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