新任挨拶
名古屋大学大学院工学研究科 マイクロ・ナノシステム工学専攻 集積機械デバイス講座 マイクロ・ナノプロセス工学研究グループ 秦 誠一 教授 |
平成24年10月1日付にてマイクロ・ナノシステム工学専攻集積機械デバイス講座の教授に着任いたしました.群馬大学工学部機械システム工学科を卒業し,東京工業大学総合理工学研究科 精密機械システム(現メカノマイクロ工学)専攻を修了後,オリンパス光学工業(現オリンパス)にてマイクロマシン開発の研究員を3年,東京工業大学精密工学研究所で助手を7年,准教授を7年経験しました.
学部学生の頃,日本機械学会誌で東京工業大学の林 輝先生が寄稿されたマイクロマシンに関する解説論文を拝見し感銘を受けて以来,マイクロマシン,MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を,機械屋の視点,特に材料と加工法の視点から研究しています.マイクロ・ナノ材料として多用されるシリコンのみならず,より多様な材料を適材適所で使用できるようにすることがマイクロマシン,MEMSの発展のために重要と考え,主に金属材料,特にアモルファス合金のマイクロ・ナノ材料としての可能性と,その微細加工法と,各種デバイスへの応用について研究しています.近年では,「もう少し強度のある材料が使いたい.」,「もう少し耐熱性のある材料なら…」という機械屋ならではの我儘から,欲しい特性を有する材料を創成してしまおうとしています.
機械屋ながらに,この我儘を満たすために,材料探索に「コンビナトリアル手法」を取り入れています.これは組成や作製条件などの異なる多数のサンプルを基板上に集積して作製し,それを高速,高効率にて評価し,目的とする特性を有する材料を効率的に見出す手法です.材料探索の機械化,自動化につながる研究であり,機械屋としても大変興味深い分野であると言えます.マイクロ・ナノ材料の探索,評価,加工それぞれの「プロセス」を,コンビナトリアル手法を応用することで発展させ,名古屋大学,ひいては日本に貢献していきたいと考えています.
今は,10年はおろか5年先のことですら予見困難な見通しの悪い時代です.しかし,少子高齢化のトレンドだけは,少なくとも今後20年間は続くはずです.この厳しい次世代を担う若い世代は,やれゆとりだ,内向きだ,草食系だと言われ放題ですが,少なくとも私が出会う名古屋大学の若者たちは,多少の自己過小評価傾向はあるものの,語学や情報技術に精通し,いろいろなことをよく考え,必要なら海外に飛び出すこともいとわない優秀な世代だと感じています.彼らの成長を促し,活躍の土台となる工学的素養をしっかり身につけてもらうよう,授業や研究室での指導をつづけてまいります.
新参者でございますが,一宿一飯の恩義は忘れないことを信条にしておりますので,微力を尽くして名古屋大学に貢献して参りたいと存じます.東山会の皆様におかれましては,今後ともご指導ご鞭撻のほど,よろしくお願い申し上げます.