平成25年度 東山会会報

会員からの便り


トヨタ自動車株式会社
設計品質改善部

池上 徹

昭和 58 年卒業(第 42 回)
  

寄稿依頼を受け、改めて学部卒業30年にもなることに気が付きました。まさに光陰矢の如しです。しかしながら、学生時代を思い出してみると結構記憶に残っていることが多く、またその事が就職後の自分に影響している気がします。

 4年時は材料講座にて当時西村融教授、妹尾允史助教授の下で「Al−Si系合金」について、博士前記課程の水力学講座では当時村上光清教授、菊山功嗣助教授の下で「ボルテックスポンプの気液2相流輸送」について研究しました。ポンプ研究では大型計算機によるシミュレーションが始まった時期で指導教官からシミュレーションを行うようにとの指示があったにも関わらず、実験を選択し、観察による解析を行いました。しかしながら本実験に入る前の準備に長い時間を費やし、一緒に研究していた4年生はさぞやきもきした事と思います。基本的に研究に関する設備や計測器等は自分たちで製作するため水銀マノメータや可視化用透明アクリルポンプケースは技官の協力を頂き製作しました。特に計測器製作では助手の方から参考書と機材を渡され、初めて経験する回路設計とハンダ付けに明け暮れました。また、ポンプ内の可視化にあたっては夜中真っ暗な中でストロボによる写真撮影を行いました。今のようにデジタルカメラでないためシャッタースピードや絞りの組合せをいろいろ変え撮影し、うまく撮影されていることを祈ったものでした。

 また、大学院時代は各講座に院生が3名程度しかいないことから先生方や先輩、仲間達と議論する機会が多く会ったような気がします。また、先生方も勿論研究者でありましたが、教育者でもあり、エンジニアの心構え等厳しく指導されたました。

 この経験は今考えるとトヨタ自動車に入社後特に実験部に入社したこともあり、非常に役に立ちました。知らず知らずのうちに物を触ることの大切さや新しい計測する際の工夫に生かすことができました。特に学生時代と違い、設備や計測器は独占できないため、実験での失敗を最小限にすべく様々の想定をして事前準備する事に役立ちました。学生時代に自分でしっかり調べ考えること、関係者としっかり議論すること、物をしっかり見る事といったエンジニアの基本を培われたような気がします。

 また研究以外でも講座対抗や工学部対抗戦のための晴れた日は毎日野球の練習をし、仲間と大いに汗を流し、当時「常夜灯」といわれた水力実験棟で研究とそれ以外のON-OFFの切り替えもしていた気がします。これも社会人になって役立ったことかも知れません。

 会社生活も残すところ少なくなってきましたが、エンジニア魂を忘れず、ユーザや社会に役立つ商品・技術の開発に邁進したいと思います。

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