Q. 具体的には,どのような形でプロジェクトを進めていくのでしょうか.

本プロジェクトの目的は,世界レベルの研究拠点の形成ということですので,研究の質的向上に加えて,若手研究者の育成という使命を負うことになります.

まず研究の進め方について説明します. ナノテクノロジーは,材料・電子の分野の技術として脚光を浴びていますが,機械技術の分野においても,極めて重要な技術となりつつあります. 機械の特徴は相対運動を伴うということにあり,相対運動の境界面としては,固体や液体・気体があります. これらの特性には,マイクロナノの微小領域の相対運動において,量子化の影響が現れます. 例えば,表面力,摩擦力,摩耗,破壊,流れなどが量子化されます(図2). このような量子効果を対象とするナノ機械科学の分野について研究を推進します. メカトロニクスは,加工・制御・計測・運動の四つの分野を融合した技術です. 当拠点では,これらの分野において,これまでに顕著な成果を上げてきました. そこで,ナノ機械科学の研究成果を,加工・制御・計測・運動に関わる要素技術と融合させ,マイクロナノメカトロニクスの基盤技術として体系化します. さらに情報社会を担うシステム化技術として,三つのシステムの開発を進めます(図3). 情報機械システムは,機械的な方法によって時間情報と空間情報の変換を行うものです.ビットサイズは原子分子サイズに,画素サイズは光の波長に迫っています. ここでは高記録密度化,高精細化により,高速・大容量の情報ストレージを実現し,情報ネットワークに提供します. このネットワークと人間との切り口に情報医療治療システムを,また機械との切り口に情報知能化ロボットシステムを位置付けます. ヒトに対しては,個人別の膨大な遺伝情報や生涯病歴に基づいた情報医療治療システムの構築を目指します. ここでは,化学ICチップと人工細胞デバイスを研究します. 機械に対しては,大規模センサ群やセンサ情報統融合に基づいた情報知能化ロボットシステムの開発を目指します. ここでは,ロボットの知能化および自律化を研究します. また,情報ネットワークを介して,ヒトとの間で情報空間と物理空間を共有することができれば,人間共存協調型ロボットを実現することができます.

図2 ナノ機械科学分野における量子化効果
図3 高度情報社会を担うマイクロナノメカトロニクス

つぎに人材養成について説明します. 教育の充実と若手研究者の育成は本拠点の重点施策です.このために,以下のプログラムを準備します.
1)ドクターコース学生のRA雇用,ポスドク雇用を拡充し,若手研究者から構成される研究グループの形成を奨励して,競争的研究環境を醸成します.
2)大学院学生を国際会議で積極的に発表させて国際性を涵養するとともに,短期派遣制度を定着させます.
3)若手研究者の独創的なアイデアには,学内外の支援を優先的に活用して事業化を促進します.
4)新展開が有望なテーマを設定して,学生にアイデアを応募させ,優秀なアイデアには研究費を補助して研究を実施させるとともに,成果を評価します.
5)社会人を積極的に受け入れ,キャリアアップした高度職業人を育成します.




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